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出版 『学校給食アレルギー事故防止マニュアル ―先生・親・子どもとはじめる危機管理』

2014.05.16
学校給食アレルギー事故防止マニュアル―先生・親・子どもとはじめる危機管理
著者:赤城智美 NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク
価格:1,100円+税
発行:合同出版 A4判96ページ 2014年4月15日
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アレルギーという課題は、疾患や病気を治すという観点からすると医療の問題ですが、医療だけでは解決できない社会的文化的課題や暮らしの課題を常に含んでいます。一昨年2012年12月に、東京都調布市で発生した、学校給食・食物アレルギー誤食死亡事故。この事故を受けて本書は発行されました。

読者のみなさまへ

2012年12月20日、東京都調布市の小学校で、学校給食の誤食事故が起こりました。
乳製品のアレルギーがある小学5年生の子どもが、給食のおかわりの際に、誤って渡されたチーズ入りチヂミを食べて死亡するというものでした。痛ましく悲しい事故でした。文部科学省によると学校給食に関連した死亡事故として、北海道札幌市の小学生が給食のそばを食べた後に亡くなった事故(1988年)以来、2例目であると報告しています。
年が明けた2013年1月8日の仕事始めの日からアトピッ子地球の子ネットワークの電話は鳴りっぱなしになりました。その多くが、新聞記者、学校給食の関係者、小児科医、行政関係者などからの取材や対応策などの照会でした。
それから少し経った1月の終わりから2月頃になると、今度はお母さんたちからの電話が入りはじめました。電話の多くが相談や意見、情報の提供でした。
調布市での事故をきっかけに「これまで(学校給食で)アレルギーの対応をしてくれていたのに、4月からはしないといわれてしまった」「いままで何年も話し合って、食物アレルギー対応のためのルール作りをしてきたのに......」「食物アレルギー対応の給食が実現していたのに......」「これからどうしたらいいか?」などなど。
死亡事故以降、手のひらを返したように学校・教育委員会の対応が変わったという報告が何例も続きました。押し並べて学校側が柔軟性を欠く対応をすることになるとは思ってもいませんでした。行政側からは「体制を整えるまではアレルギー対応を見合わせる」という言い方をされましたが、一般には「給食を作らずにお弁当にすれば危機管理をしなくて済む」「アレルギーはごく一部の子どもの問題」などという受け止め方がなされ、「お弁当を作らないのは親の怠慢だ」というような新聞への投書やインターネットへの書き込みには、これまでの関係者の努力がいっぺんに崩れていくような感覚に陥りました。
しかし、のちほど <本書文中にて> くわしく説明しますが、お弁当にしたとしても危機的な給食事故は起こります。「お弁当にすれば学校は危機管理をしなくていい」という安易な発想は、危機の回避には役立たないだけでなく、危険であることを強調する必要性を痛感しました。 では、食物アレルギーがある子どもが安心して学校生活を送るには、家庭は、学校関係者は、どうしたらよいのでしょうか?

本書はリスクコミュニケーションの視点から食物アレルギー、学校給食を考えてみました。
ご存知のようにリスクコミュニケーションとは、さまざまな立場にある関係者全員が、情報を共有し、危機管理のためのプランを立て実行するという考え方です。
しかし、いまの学校の現状を見てみると「関係者全員が情報を共有する」ということ自体がうまくいかないことが多いのではないかと感じます。上下関係や指示系統が厳格で、対等な意見交換の雰囲気がない組織があります。たとえば、雇用関係が複数ある(正規職員、パート、委託事業者など)組織では、「関係者全員が危機管理という共通の手0間のために情報を交換する」ことの必要性の認識度合いや、立場の相違が壁になって伝達が阻害されることがあります。
学校生活のリスクコミュニケーションにはクライシスマネジメント(危機事態の発生後の対処方法)とリスクマネジメント(危機事態の発生を予防するためのリスクの分析とリスクの回避)の2つが課題としてあると思います。今回の事故や、私たちの団体に寄せられた相談事例を見ると、栄養士、調理員の方々は日々、緊張して食物アレルギーへの対応をしてくださっていることは疑いありません。しかし、クライシスマネジメントやリスクマネジメントが、学校全体で、あるいは子どもを包含したクラス運営の中でおこなわれる段階にはたっしていないと感じています。

学校給食で、もう1つ重要なテーマは「給食は教育として実施されている」という点です。
学校給食は「教育の機会」なのです。栄養や健康について学ぶ、楽しく食べる、食事を作った人、食材料を作った人に思いを馳せるなど、さまざまな教育の視点があります。それに加えて、表示を見て安全に食品を選ぶ方法やアレルゲン管理、子ども自身が健康管理する方法など、学校給食が課題にすることはたくさんあります。
食物アレルギーの子どもたちは、日々自分のアレルゲンを避ける努力をしていますが、「家庭の努力」だけでは、「自己責任に帰す」だけではとうてい避けられない事故があります。子どもたちは、日々の食事のほかにも、さまざまな不便を抱えています。事あるごとに、ほかの人とは違うということを感じています。「他者とは違う」ということがいじめの原因になったり、子どもの「自己肯定感」の発達を阻害しないように、教育の現場で「共に生きる」ことをあらためて教育課題に位置づけたいと思います。

この本が誤食事故の検証に基づくリスクコミュニケーションの試案、アレルギー疾患から学校給食のありかたを考える素材として、お役に立てれば幸いです。

目次抜粋

  • 第1章 学校給食と食物アレルギー?
  • 第2章 調布市の学校給食事故から学ぶもの?
  • 第3章 調布市の学校給食事故はなぜ起きたか?
  • 第4章 誤食したときの緊急対応 ―エピペン講習とシミュレーション
  • 第5章 事故を防ぐために、先生・親・子どもができること?
  • 第6章 アレルギー問題を食育につなげる


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